出梅
2010年7月16日(金)23:49 | Category:生きモノ
今朝、裏の森で一斉にセミが鳴き始めた。
データを取り、色々な要素から推測をする気象庁の「梅雨明け宣言」は、後で撤回されたり、不明瞭なまま既に明けていたりと、ここ数年の天候不順に振り回されている感じだが、彼らは明快だ。彼らは何故か梅雨の終わりを察知し、一斉に羽化をする。梅雨の間に何度となく晴れ間はあり、30℃以上の真夏日となることもあったが、フライングで鳴き出すものは殆どなく、セミの声を聞いて慌てて天気図を見てみると、梅雨前線は太平洋高気圧に押され気圧配置は夏型へ移行しつつあった。
カエルやネコは湿度に敏感で間近の雨を察知できるようだが、セミは雨期の終わりなどという複雑な変化をどのように知覚しているのか。数匹が鳴き始めて日を追って徐々に増えていくわけではなく、明らかに一斉にという感じで始まるのだから、体内に何らかの器官や遺伝子レベルの判断基準を持っているのだろう。ともかく気象庁の発表に関わらず、私の中では「セミが鳴き始めた=梅雨明け」という認識でいる。夕方には激しい雷雨もあり、感覚の鈍い人間的にも梅雨が明けたことを感じた。
ちなみに、こちらは大阪なので「セミが鳴き始めた」というのは現在はクマゼミのことを指す。遠回しな言い方になったのはセミの分布は意外に複雑で変動が大きいからで、こちらの当たり前があちらでは通用しないことが度々あるからだ。例えば関東では普通に生息するミンミンゼミは関西の都市部には滅多にお目にかかることはなく、TVで夏の効果音として聞かれるセミの音に子供の頃は違和感を覚えていた。ただ、明確に東日本や西日本、といった生態区分がある訳ではなくその分布は入り組んでいる上に変化を続け、本来生息していない筈だった場所でも確認されたりしている。
一説には定番の温暖化やヒートアイランドなどの気候要因や、植樹される木によって幼虫が持ち込まれるケース、天敵などの要因も絡んでいるとか、探さなくても聞こえてくる調査のしやすさでは他に類を見ない生物なので、探せば市町村のエリア単位での分布を見ることができる。
確かに大阪はほぼクマゼミの支配下だが、昔からそうだったか?と首をひねる。
三十年以上前、私の記憶ではセミ捕りというのはまず雑魚の王道としてニイニイゼミがいて、夕方になると茶色い羽のアブラゼミで、クマゼミはそれほど多くなかった気がする。そもそもニイニイゼミの声を最近全く聞かないが一体どこへいったのだろう?アブラゼミも聞くには聞くがかつての夕方を思い起こすにはほど遠く、とにかく朝から晩までクマゼミの轟音が続く。眼下に広い緑があるのは嬉しいが夏に限ればそこは一面のスピーカーとなる。
考えるとかなりおかしな生態である。
鳥が鳴くのとは世界が違う、ほぼ鳴きっぱなしでそこら中の木に何匹も貼り付き、ほぼひと月、随時交代要員を補充しながらわめき続ける。騒音レベルの音量なのに古来から夏の環境音として欠かせず、樹液を吸うぐらいなので特に駆除されることなく今日まで夏の風物詩上位の座を守っている。セミのいない国の人間がここに住んでみて何と思うだろう。
じめじめした、最も苦手な季節が終わるのは嬉しいが溜息も出る。
じゃあメスのように鳴かなければいいのかというと、例えば桜の木にびっしりセミが貼り付いたまましーんとしているのを想像するとそれはそれで恐怖である。
夏が始まる。
地上に這い出てやっと羽化だ、「と思ったら脱け殻の方でした」とはなりたくない。





